あばかれ、奪われる〜セフレから始まる歪愛〜


「メイク。ちゃんと俺の要望通りにしてくれてる」


なんだ、メイクか。まあ確かにいつもと出来上がりが違うなとは思ったけれど。

少し残念に思っていることに気付いてまたもハッとした。
だめだ、完全に意識してしまっている。
だってこんなにかっこいい人、滅多にお目にかかれない。

この霜月漣という男性は、まずいことにどこもかしこもタイプだ。
優しげに垂れた瞳も、泣きぼくろも、細くて長い指も、何もかも。

咄嗟に目を逸らし、用意された服に目を向ける。
そうだ見なければいいのだ。
視界に入らなければ意識することも無い、説明が終わる頃にはこの動悸だって治っているはずだ。
そう思って、いた。


「白雪ちゃん」


思いの外近くで呼ばれた名前に、ぞくりと甘い刺激が走る。その人は、声までも私を溶かそうとする。

金縛りにでもあったかのように動けなくなり、体の前で重ねていた手元だけがプルプルと震えていた。


「少し髪、弄るよ」


そう言って霜月さんは髪をすき、たったそれだけなのにぴくりと身体が勝手に反応する。
なんでいちいち動作が色っぽいんだ。
それとも私が過剰に反応してるだけ?


「…お願い、します」


後ろを向き、目は伏せたまま答えた。

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