あばかれ、奪われる〜セフレから始まる歪愛〜
彼の謎


翌朝、朝食会場に向かうと漣の姿は見当たらなかった。
本当に人と食事するのが苦手らしい。


「白雪」


お盆を手に持った瞬間に背後からかけられた名前にびくりと身体が跳ねた。
恐る恐る振り向けば、凄まじい顔色をした和泉さんが立っていた。


「お、おはようございます…」


その表情に一瞬昨夜の事がバレたのかと思いきや、酷い顔色をしているところからただの二日酔いである事を察した。というか、元はといえばああなったのはこの人のせいなんですけどね。


「顔色すごいですよ。大丈夫ですか」

「…いや、まあ、自業自得だからな…」


頭を押さえながら生気なくそう言う和泉さんに部屋で休んでいたらどうかと言うも首を振る。


「ちょっと急なトラブルで一本早く事務所に戻る事になった。お前は今日は直帰でいい。明日は休みだが、明後日には台本が届くから取りに来い」

「分かりました」

「帰りは気をつけろよ」


どうやら和泉さんは食事を終えた帰りだったらしく、ふらふらとしながら出て行った。

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