ハッピーエンド・オーバー
期待、責任、押しつぶされそうな重圧。この歳になると自分の容量も理解できるし、立ち回り方も上手くなった。ただ、どうしても上手くいかないことが続いた時、ふっと肩の力を抜ける場所が恋人で、友人で、家で、仕事だったりして、私の場合、今は仕事しかないという状況だ。

一度きりの人生だ。死ぬ時に、なんだかなあ、と思いたくないから、人生の大きな節目を迎える度に自分を納得させて生きるよう心がけてきた。

それが評価に繋がったのか、大きなプロジェクトの責任者に指名される機会も増えた。

そんな私でも、男を見る目だけはどうしても養えなかったらしい。

「私に期待せず、お金持ちで、犬好きで、程よく干渉してくれて、広い家に住んでるスパダリ、どこかにいないかなあ〜……」

ひとりごちて、落ち込む。この歳になってそんな都合の良い人は、大体良いお相手がいるか果てしなく遊んでいるかの二択だと思う。


「ていうか、" あきくん "と付き合うって可能性はゼロなの?」


杏桜は無邪気に問いただした。

ああ、あきくん。お金持ちで私に期待せず、犬好きの男。──……ただ。

「ありえないよ。今さら何かあるはずない」

あきくんにとって私は恋愛対象外。これが鉄則。

彼の恋愛は短いスパンで回る上、一度終わると縁も切れるという噂だ。

今まで幼なじみとして関係を続けられているのも、あきくんと私の間に恋愛感情がゼロだからこそだと思う。
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