ハッピーエンド・オーバー


何度も話したあきくんとの関係。その度に杏桜は呆れる。

「あたしさあ、羊の男の見る目がないの、あきくんの責任も大きいと思うんだ」

あきくんの、責任?

心外だ。少なからず私の人生に関与しているあきくんだけど、こと恋愛面に関して彼の関与はゼロだと何度説明すれば良いのか。

「ソースは?」とブラックコーヒーを胃に落として杏桜に問いただすと「女の勘」と、かなり抽象的な回答を寄越す。

「うわあ、厄介だね」

杏桜の勘はとても良く当たるのだ。




〜♪

睡魔と戦いながら仕事に打ち込んでいると、スマホがメッセージを届けた。大家さんか、それとも両親か、はたまた消防署か。

私の予想とは裏腹に、スマホのスクリーンにはあきくんの名前が表示された。

《はる、今日何時に終わる?》

あきくんはこうやって突然連絡を寄越す。前回は1ヶ月ほど前に何の脈絡もなく《今から行っていい?》と言われた。

彼の突然の訪問に慣れているので《いいよ》と了承すると、しばらくして彼は私の家にやってきた。

『はる、いい加減家変えろよ』

虫出てきそうじゃん、と付け足したあきくんに、じゃあどうして来たの?と当たり前に言い返すと、近くで飲んでた、とあきくんは雑に返事した。

私のことを、「はる」と呼ぶのはあきくんだけで、あきくんのことを「あきくん」と呼ぶのもまた、私だけだ。

あきくんはその日私の家で缶ビールを一本だけ飲み、Web漫画を勧めて帰った。彼氏持ちの家に長居はしない、とまともなことを言うけれど、彼氏持ちだと分かっているなら来るなと思った。

けれど、私に彼氏がいる時、あきくんは本当に長居しない。『幼なじみ』の強固な称号を持つあきくんだからこそ家にあげていた。

あきくんが勧めた漫画の無料分だけ読むと、これが稀に見る傑作で、最新刊まで課金した上徹夜してしまい、《あきくんのせいで徹夜しちゃったじゃん》と、責任転嫁するメッセージを送った。
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