ハッピーエンド・オーバー
前回はそんなやり取りで終わっていて、突然、今日何時に終わる?だもん。

そんなの、納品前だから徹夜に決まって──……

思考回路を止めた。

……そういえば被害状況の確認と、大家さんに補償の話を詰めなければならない。回らない思考回路の隅に置かれた予定を思い出し、メッセージを消した。ああ、億劫だ。

《定時で終わると思う》

なんの変哲のない返事を寄越した。あきくんの返事はなかった。スタンプひとつも。

人生において最も重要なのは何かを諦めることだ。諦めた先が正解だと信じ込みながら生きていくものだ。




「よー、薄情者」

「…………え?」

仕事終わり、オフィスの入るビルを出てすぐの舗装された広場にあきくんは居た。

華奢な身体とそれに見合う、綺麗なベビーフェイス。カジュアルなスーツスタイルだけど清潔感が漂うその人、一ヶ月ぶりのあきくんは、どこかのアイドルグループの一員だろうかと見間違う。うん。本人に確認しない限り30歳にはとうてい見えないし、自認は大学生で良いと思う。

「薄情者ってなによ」

そんなアイドルグループの一員(仮)は会って早々毒舌である。
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