ハッピーエンド・オーバー
彼が連れてきたのは部位の食べ比べができる焼肉店だった。お洒落で隠家的なお店は、如何にもあきくんが利用していそうだな、と些か億劫になりながらも、背に腹はかえられずに座敷に案内された。
とはいえ、ずらりと並べられたビジュアルが最高なタグ付きのお肉たちを前に目を輝かせた。
「神様仏様晃仁さま〜!持つべき幼なじみはあきくんだね!」
「大袈裟。気持ち悪ー……」
あきくんの憎まれ口なんて竹輪耳だ。じゅわり、きらきらに輝く油が焼けたお肉の上で弾ける。タレに搦めて口に運ぶ。お肉が溶けた。ああ、美味しい、幸せ〜……!
あきくんとの食事は、いつも仕事の話で会話が弾む。あとはだれそれが結婚したとか、子供が生まれたとか、同窓会も皆勤賞で、私よりも遥かに交友関係が広いあきくんが教えてくれる。
「みんな充実して何よりだよ。私はあきくんくらいしか定期的に会う友達がいないっていうのに」
お酒を飲みながら吐露すると、あきくんは微笑んだ。あきくんの笑みは魔性で、ひとたび笑えば女の子をその気にさせる、傾国級の笑みだ。
「俺がいるから良いじゃん」
そして言葉巧みに誘惑するので人が悪い。
「私はあきくん以外にも拠り所を作るべきだったと今でも後悔してるよ」
「なんで?俺はいつでもはるに会いたいよ」
誘惑を自覚する。しかし私は彼という人を私は十分に理解しているから、その言葉に寒気がした。