ハッピーエンド・オーバー
──……迎えに来た?
何を言っているんだ、迎えにならさっき、会社に来てくれたじゃないか。
言葉の意味が分からずに「ああ、そうなんだ〜」と返事をし、とりあえず肉を食べた。美味しい。美味しいは正義だ。生きる意味だ。正義を咀嚼していると、あきくんは続ける。
「30歳になったら結婚するって話、まさか忘れたとは言わせねえよ」
「ぅえっ!?」
正義を堪能中の今、パンドラの箱をこじ開けられるとは予想外で、思い切り噎せた。あきくんに飲み物を渡され吃驚した喉を落ち着かせても、思考回路は落ち着かない。
「え、な、なんで……?」
説明を求める。袖口を軽く捲ったあきくんは、涼しい顔のままだ。
「お前、今日誕生日だって気づいてないよな」
誕生日……?
だって誕生日はメッセージを送り合うのが私たちで、私はそれを誕生日のアラームにしていたけれど、今日、誕生日?送られてないよね、毎年恒例のあきくんと彼女とのツーショット写真付きのメッセージ、あれれ?
軽いパニック状態の完成だ。
「てことは私、誕生日の前日に彼氏に振られて、誕生日当日に家を失ったってこと?」
「そういうこと」
「うわ、30代のスタートダッシュ、最悪じゃん。でも、元彼と火事で20代を精算したって考えて、今日からリスタートってことにしよう。うん。それがいいよね!ということで、あきくんも誕生日おめでとう!奢ってくれるって話だけど、ここは私も半分……」
人は都合が悪ければ雄弁になるという。私もそうだ。何とか、穏便に、話を逸らしたい。けれど、「話は終わってねえよ」と、あきくんは強引に話の腰を折った。