ハッピーエンド・オーバー
アイドルにでも見紛うそのベビーフェイス。彼の目は1ミリも笑っていない。

まさか、まさかとは思うけれど、次に言われるであろう言葉が予感めいて、脳裏でリフレインする。

「話って?」

私の勘違い。それとも、冗談って言われるのかな。
騙されたとか、ンなわけあるかって笑い飛ばす?

ありとあらゆる可能性を脳裏でロールプレイングしていると、あきくんはため息を交えながら鞄から大きな茶封筒を取り出した。

「これ、不備は無いか確認して」

手渡された薄っぺらな紙は婚姻届だった。

──……婚姻届だった。

《枢木晃仁》と書かれた名前は相変わらず達筆で、互いの両親……ご丁寧に私の親にまで依頼したのか完璧に記入済で、空欄は私の名前と住所のみだ。

「ねえ……本気なの?」

「本気だけど」

嘘でしょ……?と絶句しながら裏返した。証人にはお互いの親友の名前が記名されていて、本日二度目の嘘でしょう??を心の中で唱える。

「これ、結婚資金。暗証番号は今日」

さらに差し出された通帳には私の預金よりもずっと多くの資金が記帳されて、開いた口は塞がらない。

冗談にしては仕掛けが壮大すぎるし、本気にしては普通すぎる。
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