ハッピーエンド・オーバー
そんな奇妙な縁で繋がれていた私と枢木晃仁。
思春期になると枢木晃仁は自分の魔性に気づき始めた。
将来、人をダメにするその片鱗を見せ始めたのもこの頃だった。
持ち前の美貌と人懐こさ。それから物腰柔らかな口調で先輩も後輩も同性も狂わせ始めた。だらだらと異性を誑かし、自分の気が済むまで味わい、興味がなくなったらあっさりと食事を終える。彼はそんな男だ。
自分勝手な枢木晃仁の噂は、どこに行っても耳に入るから私ももちろん知っていた。
けれども私は彼にとって恋愛対象外どころか性の対象にもなっていないと気づくのは案外早くて、それは私が彼にとって、幼なじみ以上でも以下でもないことを知らしめていた。
そんな私たちの腐れ縁は、一旦途切れることになった。
枢木晃仁は地元の大学を、私は地元を離れ、専門学校を受験するのだ。
私は枢木晃仁の妹たちを通じて彼の進路を知っていたけれど、枢木晃仁は私の進路について何も聞かなかった。妹たちに尋ねても私のことは何も聞かれていないと聞いていたし、そう信じていなかった。
──だから。
「30歳の誕生日の日、お互いフリーだったら結婚しよう」
あれも全部、私を揶揄うだけの言葉だと思った。