ハッピーエンド・オーバー
燻った煙が私とあきくんを遮る。白んだ世界の先にいるあきくんの瞳はちっとも茶化してなどいなかった。

「はる、お前はどうすんの。今から本当に、一から全部やり直すつもり?」

「……それは……」

「早く諦めて、俺と結婚しようぜ?」

楽観的なくせに傾国級の微笑みが私を誑かす。人生をかけた選択肢をこれほどあっさりと。

場所は居酒屋、睡眠不足で体調は最悪。アルコールに浸された脳内で正常な判断など出来やしない。なのに答えを急かす幼なじみ。食べ散らしたテーブルの上には婚姻届。

ぬるくなったレモンサワーを掲げた。
妥協したくない。悔いは残したくない。

30歳、家は無い。男を見る目は養えない。どうせこの先迎えるのが孤独ならば、共に居るのは私と同じくらい孤独な人が良い。

「分かった。私でよければ、あきくんの人生に付き合うよ」

「ああ。せいぜい付き合ってもらうわ」

カラン、と私たちの間で祝杯が鳴った。

喉に流し込んだぬるいアルコールは睡眠不足の身体には最低で、最高に甘ったるい味がした。



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《拗れた幼なじみ二人による、十余年の答え合わせ》


《はじまり、はじまり》
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