ハッピーエンド・オーバー
二人が結婚した、という話はあきくんからもちろん聞いたし、母も羨ましそうにしていた。
『お隣の枢木さん、仁菜ちゃんと羽仁ちゃん、二人とも結婚するんですって』
それは世間話のついでのようなニュアンスで、特に言及されることは無かったけれど、やんわりとプレッシャーを感じたのも事実だ。
「招待したのに、はる、結婚式来ねえもんな」
あきくんは面白がって私を式に招待した。私だって羽仁と仁菜のウエディングドレスを生で見たかったし、直接お祝いしたかった。丁重にお断りした理由はある。
「何が悲しくて" 将来の義姉 "なんてふざけた肩書きで新婦の家族席に紛れなきゃいけないの」
「結果的に義姉じゃん」
無意味な結果論である。
「円満な生活のためのルールは都度追加するってことで、あとは月一どこかに出かけるようにするか。はるは何か要望は?」
余裕の笑みを向けられる。彼は私の闘争心に火をつけるのがとても上手だ。
「私にメリットがありすぎて、あきくんのメリットがあるのか是非議論したい」
「単純にその方が仕事上も都合がいいし、メリットがなければ持ちかけねえよ」
確かに、野心的なあきくんのことだ。不利益を好まないだろう。
「他は?」
あきくんは私に質問を促すと、腕時計を一瞥した。
もちろんある。沢山ある。
仮にも夫婦であれば、避けて通れない問題こそ早めに認識すべきだ。
一度目を伏せ、ゆっくりと見上げる。「……せ、」と躊躇いがちに言葉を吐き出すと「せ?」と、あきくんは返す。
「……性生活、とか、どうするの……」