ハッピーエンド・オーバー
こんなの、朝の話題じゃないことくらい理解している。
けれども、言うタイミングを逃したら言えない話題だってことも理解している。
マグカップに描かれた羊のイラストを親指で撫で、じいっとあきくんの答えを待つ。どきどきと鼓動が逸る。彼は一瞬も表情をゆるめないまま「ああ」と息を吐き出した。
「多分俺とはるの認識は違うから、なくて良いわ」
彼が提示したのはNO。
安心したような、落胆したような、分かりきっていたような、彼の慈悲であるような。
「……認識って?」
「セックスの認識」
──……いや、バカにされているだけでは?
脳内でラウンド開始のゴングが鳴り響く。
「セックスくらい分かりますけど!?」
「はるが知ってるのは、おままごとに毛が生えた程度っしょ」
あきくんは、私の闘争心に火をつけるのも得意だけど、私を冷静にするのもまた得意だ。ねじ伏せられているだけかもしれないけれど、あきくんに負けるのも、もう、長年の付き合いなので諦めている。
「はるが寂しい時は慰めてやるから、いつでも言えよ?」
しかし何年経っても、企んだ目付きに煽られそうになる稚拙な私の感情。