ハッピーエンド・オーバー
再確認する。
「私、もう二度とあきくんには頼まないって決めたの」
やっぱり私は恋愛対象でもなければ、性の対象にも見られない。あくまで友人の延長線。あきくんの人生が円滑に進むための歯車のひとつで、利益のうえ関わるだけの浅い関係。
「じゃあまた夜。俺先に出るわ」
あきくんは腕時計を確認すると、平然と仕立ての良さそうなブラウンのジャケットを羽織った。
返事に迷う。あきくんに甘えている時点で勝とうなんて烏滸がましい。だけど、少しでもいい。対等な立場でありたいと思ったのは、女の矜恃か。
意地を微笑みの裏側に隠して、手を振る。
「行ってらっしゃい、ダーリン」
私の些細な抵抗に、刹那、あきくんは不意をつかれたように目を丸くさせ、それから柔らかく微笑んだ。負けを予感めく。
「ちゃんと帰ってこいよ、ハニー」
まるでアイドルのファンサのように完璧なカウンター。玄関のドアがパタンと閉まった直後、その場にゆるゆると腰を落とした。
「(は、腹立つ…………)」
初日から不安の多い結婚生活は、一体何時まで続くのやら。