ハッピーエンド・オーバー
「え!?一昨日家が火事で燃えて昨日結婚した!?何それ、芸人のコント?」


事務所に出社すると、すぐに所長へ報告をした。ちなみに所長は一週間に渡る出張帰りなので火事の件も一緒に伝えたけれど、確かにネタのような話で、我ながら所長に同感だ。

「まさか辞めるなんて言わないよな?」

「あ、辞めません。仕事はそのまま継続して働かせていただければ」

「ああ、良かった。いま榛名に抜けられると困るからさあ」

「もう榛名じゃないのか、新しい苗字は?」と、脱力させた所長は、ええっと、登録情報に関する書類は〜……と、パソコンで何かを入力させている。

「えと、くるるぎ、です」

ためらいがちに応える。結婚を決めたのは私なのに、どこか気恥しさを感じながら。

「へえ、枢木ね。あの彼氏とはそんなに長かったんだ?」

所長の勘違いは当然だ。仕事上ある程度プライバシーは守られているとはいえ、飲み会やランチを一緒に取る事が増えれば多少なりともプライベートは共有するものだ。イコール、私に彼氏がいたことはもちろん所長も周知の事実だった。

「いや、実はあの彼氏とは一昨日別れて」

「は?え?ということは榛名の二股が原因で別れた?」

「や、二股は……」
「待って、榛名の浮気に逆上した元彼が放火したってこと!?えぐいな!?」


ええ、やっぱりそうなりますよね。

省略された事実だけ受け取ると、私だって同じ結果に落ち着くだろう。
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