ハッピーエンド・オーバー
事実は小説よりも奇なりという。私の濃縮された二日間は、それほど一筋縄じゃいかない。

「違います、火元の特定は初日に分かってます。実は隣の部屋に住んでいたのが、売れないホストで」

ぽつりぽつりと話し始めると「まって、既に面白い」と、所長は笑いを堪えた。

「彼女……というか多分太客の女の子を切るために別れ話を持ちかけたら女の子が怒って、彼氏に殺虫剤を振り撒くほど怒り心頭で、お部屋に殺虫剤が充満した状態で彼氏がタバコを吸おうとライターで……」

「わーお、修羅場だ。男は無事なの?」

「はい。彼女の涙ぐましい救助活動によって、軽症で済んだらしいです」

しかし、おかげで二階建て木造アパートは全焼。防火対策を怠ったとかで、管理人さんの責任を問う方向で固まっているみたいだ。

「で、結婚相手は?」

「えっ……と、起業とかしてるひと……です」

「騙されてる?」

「ちがいますーー!幼なじみです!」

「ああ、飲み会で榛名が酔った時タクシー代わりに来てくれてたあのイケメンくんか」

あきくんが弊社で足認識されてしまっているのは私の不徳の致すところだ。呼ぶのはもちろん彼氏がいない時だけだし、飲み会で泥酔した経験は僅かなので、頻度としてはそれほど多くない、はずだ。

「…………その人です」

申し訳なさから、蚊のような声で返事をした。

「わかった、わかった。書類一式出しておくわ。ちなみに仕事上の苗字はどうする?」

苗字は、あきくんも私の事はるって呼んでるし……

「榛名のままでお願いします」

「了解。式の日取りが決まったら早めに教えて」

挙式の予定は無いのだけど「分かりました」と返事をした。
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