ハッピーエンド・オーバー
その後、同僚たちにどう説明するか機会を伺っていれば、場の空気を切り裂くように手を大きく二度叩いた所長が一言。

「榛名が結婚したから、今度、焼肉か寿司な」

と、一斉に知らせるので、オフィスはたいへんな動揺が沸き起こった。祝福と同時に早速ホワイトボードには焼肉派か寿司派かアンケートゾーンが作られていたし、スケジューリングもBCCで送信されてきた。弊社はこういう時だけ一致団結する。それも爆発的に。

ただ、杏桜だけは「は!?どういうこと!?結婚!?」と、昨日に引き続き驚かせてしまったので「ランチの時ね」と、約束を取り付けた。

あきくんと結婚したこと。学生の時、実は結婚の約束をしていたこと。冗談だと思っていたこと、本気だったこと、あきくんは忘れていなかったこと。

「私のこと、馬鹿だと思う?」

肩を落として杏桜を見あげれば、杏桜はにやりと含み笑いを浮かべた。

「全然!羊みたいに保守的な子が思い切って飛び込める場所があるのは貴重だと思うな。この歳になると余計にない」

「甘えられる場所、とも言う」と、杏桜は続けた。

「(甘えられる場所……)」

たしかに、あきくんに対しては意地を張っても強がっても無駄だ。長年の付き合いが私にそう教える。

物思いに耽っていれば、杏桜はふわりと微笑んだ。

「やっぱり、羊とあきくんと結ばれる運命だったのね〜」

なんて私に似つかわしくない、気持ち悪い総評でこの二日間の騒動をまとめたのだ。
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