ハッピーエンド・オーバー
「よくそんな時間あったね、羽仁」

ぽつりとひとりごちる。

「あいつ、アパレルショップのパートで働いてるから暇してるんだよ」

「これ、デカフェだからどうぞ」と、あきくんは朝と同じマグカップにカフェオレを用意し、目の前のテーブルに置いた。それから羽仁が用意してくれたらしい服を手に取ると、私の身体に軽く当てて、「……うん」と一人で納得した。

「へえ、正社員じゃなくてパートなんだ」

成程、旦那さんの収入で十分ってことか。

働き方は人それぞれだけど、ショップ店員というのが羽仁らしい。もしかしてこのお洋服も羽仁が務めているショップのもの?

なんて推理していると、隣のあきくんは鼻で笑った。

「あいつ、旦那に甘やかされちゃってもうだめだね」

それはちょっと、聞き捨てならないセリフだ。

「何がダメなの?私だって羽仁みたいな可愛い子、甘やかしたくなる気持ちわかるけど?」

「駄目だろ。あいつもう、旦那が居ないと生きていけないようになってんの」

一大事である。

「旦那さん極悪人だね!?羽仁、捨てられないかな!?まあ捨てられたら私が拾えばいいか!」

そうしよう!と、一人で決定づけると、あきくんはさらにくたっと笑うと、「はるまで甘やかしてどうすんの」と呆れた。

「そうか、あきくんが甘やかすんだよね」

甘やかすのは兄の役目なのだろう。
あれ?でも待てよ。私も義姉なわけだし、甘やかす理由になるんじゃない?
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