ハッピーエンド・オーバー

じんわりと、胸にやさしい温度が通うのを感じた。一組のピアスを片方ずつ付けてお揃いにするなんて、夫婦らしいことを思いつくんだ、この恋愛上級者は。

もしかして、私が指輪を断ることを見越してピアスにした?まさか、そんなことないよね。

──……まさかね?

重たくなった右耳にそっと触れる。滑らかでつめたいピアスをなぞりながら、ふと、疑問。

「ねえダーリン。これ、イミテーションだよね?」

もちろんジルコニアよね?
こんな大きなダイヤモンド、本物なわけないよね?

ときめいた胸なんて一瞬で熱を失い、ひやりとしたものが背中に流れるのを感じて苦笑いを浮かべる私に向かって、あきくんは極上の笑みを浮かべた。



「想像に任せるよ、ハニー」



──……まともに答える気もないのか。


つんと拗ねてそっぽを向く。あきくんは楽しそうに笑うのを真横で聞いた。婚姻届に名前を並べたその時から、彼の手の上であることは理解している。だからいちいち腹を立てても仕方ない。

彼の手が私の髪に触れる。

「髪、伸びたな」

私の髪は肩甲骨の下まであるロングヘアで、ミルクティーアッシュカラーの髪の毛は扱いやすいよう、毛先だけゆるくパーマを掛けている。

扱いやすいとはオシャレに気を使う女子が使う言葉で、私の場合は" 手抜きしやすい "の方が正しい。けれどたとえ一般的な解釈と齟齬があっても、私はこの長さを維持している。
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