ハッピーエンド・オーバー
枢木晃仁のことを語るには、一日では事足りない。
バレンタインにチョコをあげてもありがとうの一つもくれないし、かと思えば私が誰かに告白されると全否定されたり、クリスマスは何かと予定を狂わされ一緒に過ごすことになったり、とにかく、疫病神のようなひとなのだ。
今までの経験上私の人生の大事な局面で尽く邪魔をしたり、忘れた頃に連絡をいれたり、私と関わろうとするくせに近付くと離れる、そんな関係がかれこれ25年。そう、もうすぐ30歳の誕生日目前なのだ。
けれども私は彼氏と順調だし、あの約束はどうせ──
《ごめん、別れよ》
「うそん」
──……納品直前の深夜。残業続きでくたくたの目に飛び込んできたのは彼氏からの別れ話だった。
この年齢になって別れをLINEで送るような男に若干幻滅しながらも《え、なんで?私、何かした?》と、一応原因究明を試みた。けれども既読は付かなかった。
ちょっと酷くない?
時刻は23時を回っている。今の状態で引き続き健全な仕事ができるかと言われると、不可能だ。
残りの仕事は明日の自分にまかせることにして、とっぷりと更けた夜の世界に身を投じた。ヒールの音が私の背中を追いかけ、冷たい夜風が生身の肌を突き刺す。こんな夜だ。周囲はカップルも多く見受けられるのに、彼は相変わらず未読スルーだ。
悔しくなってきて、でも泣きたくなくて、下唇を噛み締めた。
なぜなら、『分かった。元気でね!』などと、一方的に迫られた別れを素直に受け入れるほど、彼とは安易な関係を築いたつもりはなかったからだ。
バレンタインにチョコをあげてもありがとうの一つもくれないし、かと思えば私が誰かに告白されると全否定されたり、クリスマスは何かと予定を狂わされ一緒に過ごすことになったり、とにかく、疫病神のようなひとなのだ。
今までの経験上私の人生の大事な局面で尽く邪魔をしたり、忘れた頃に連絡をいれたり、私と関わろうとするくせに近付くと離れる、そんな関係がかれこれ25年。そう、もうすぐ30歳の誕生日目前なのだ。
けれども私は彼氏と順調だし、あの約束はどうせ──
《ごめん、別れよ》
「うそん」
──……納品直前の深夜。残業続きでくたくたの目に飛び込んできたのは彼氏からの別れ話だった。
この年齢になって別れをLINEで送るような男に若干幻滅しながらも《え、なんで?私、何かした?》と、一応原因究明を試みた。けれども既読は付かなかった。
ちょっと酷くない?
時刻は23時を回っている。今の状態で引き続き健全な仕事ができるかと言われると、不可能だ。
残りの仕事は明日の自分にまかせることにして、とっぷりと更けた夜の世界に身を投じた。ヒールの音が私の背中を追いかけ、冷たい夜風が生身の肌を突き刺す。こんな夜だ。周囲はカップルも多く見受けられるのに、彼は相変わらず未読スルーだ。
悔しくなってきて、でも泣きたくなくて、下唇を噛み締めた。
なぜなら、『分かった。元気でね!』などと、一方的に迫られた別れを素直に受け入れるほど、彼とは安易な関係を築いたつもりはなかったからだ。