ハッピーエンド・オーバー
最寄り駅で降りた。けたたましいサイレンの音が鳴り響き、赤いランプが夜の闇を切り裂いて走っていた。私の心みたいだなと感じながら、スマホを手に取った。
メッセージなんかで納得出来るはずもなく、声でやり取りしたい。そう思って、着信履歴を辿った。スクロールを何度か繰り返し現れた彼氏の番号をタップする。出なかったら、明日、そうだな、何度か試して完全に拒否されたら……
「……もしもし?」
そんなことを考えていると呼出音が途切れる。
「ねえ、何が理由?」
その時の私は、相手の気遣いよりも自分の要件を訊ねてしまうほど焦っていた。
「いや、なんというか。……羊、俺の事全然好きじゃないんだろうなって」
「(…………え?)」
彼の口から飛び出した女々しい言葉に耳を疑う。
「そう考え出したら、羊が俺の約束よりも仕事が大事なのも納得できるし、仕事の付き合いが多いのだって納得いく。でも、俺としては羊ともっと会いたいのに、意味ないじゃん。付き合う意味ないじゃん。」
そうは言いますが、仕事に誇りを持っているなら多少の犠牲は当たり前じゃないの?
「え……っと、それは仕事している以上お互い様じゃない?」
思うことはあっても、関係を改善させるためならば譲歩だってしましょう。