ハッピーエンド・オーバー
付き合い方を思い返してみる。彼のドタキャンも許したよ?デート中に突然帰ることも許した。連絡がたまに途切れることも、観たい映画を譲歩することも、食べたいものを譲ったし、我慢は全て顔にも行動にも出さなかった。
「でも。どうせ女なんだから、仕事に本気になっても無駄じゃん。なのにそこまで仕事に熱中するのも俺できないし、それに……」
──どうせ、か。
結局、性欲を満たすような、独善的な我慢が全て裏目に出ていた結果、奥ゆかしく控えめな女性に見られていたとすれば、謝罪すべきは私の方だ。
濁流のように聞かされ続ける不平不満を「ごめんなさい」の一言で塞き止めた。
「やっぱり別れてほしい。女だから、仕事よりも恋人を優先すべきって考えは多分一生理解できないし、私は多分、この先ずっと、あなたの理想の恋人にはなれない」
半年一緒に過ごした人だけど、これ以上自分の時間を使うには惜しい人だったという訳だ。
──「…………そっか」
電話口の声が明らかに小さくなった。
「やば、えぐくない!?」
「え、まじで!?」
「逃げ遅れた人いるって」
「うわっ!?今爆発音鳴らなかった!?」
「動画撮って上げよう」
というよりも、騒がしいのだ。
「(ていうか、うるっさいなあ……!?)」
周囲の様子が明らかに異常だと気付かされたのは、すでに家の近所だった。