ハッピーエンド・オーバー
私の住むアパートの治安はあまり宜しくないのが現状だ。築古の木造アパートは、付近に治安が悪めの大学が存在することが災いして、毎日のように若者の喧騒が聞こえてくる。酷い時には庭で花火をする学生もいる。しかし、仕事柄職場に泊まることも多い私は、治安よりも家賃の安さに魅力を感じ、そのアパートに約三年住んでいる。
今のところ苦情も目を潰れるし、家賃の安さから住み続けようと思っているのだけど……。
──「え、うそでしょ?」
けれどその夜、私はある惨状を目の当たりにして、住み続けることは不可能だと知る。
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「家が燃えた!?えっ、大丈夫なの?」
「……全然大丈夫じゃない……」
次の日、私は出勤早々同僚兼友人である森下 杏桜に昨日の最悪を吐き出した。
恋人と別れ話になったその日、火事にて家が燃え、一日で財産と住む家と恋人を失った。こんなこと、誰が信じるだろうか。
ちなみに昨日はほぼ一睡もせずに朝方まで事情聴取が待っていたため、私のライフポイントはほぼゼロだ。
「別れ話のもつれから彼氏の家を燃やしたんでしょ」
眠気覚ましにと淹れた濃いめのブラックコーヒーを啜りながら、ため息を落とす。
「人を放火魔みたく言わないで?」
「だって羊、彼氏と別れた直後によく言うじゃん。あいつの家燃えないかな〜って」
回転チェアを揺らしながら杏桜はけらけらと笑った。
神様、私、なにか悪いことでもしましたか?
最悪を煮詰めてマグカップに入れて飲みました、みたいな不幸、人生で起きますか?
起こるのならばこれっきりにしてほしい。できることなら、今後はダメージを徐々に減らして欲しい。
ちなみに、別れ話真っ只中の彼氏(元)は、私が『どうしよう、家が火事だ……』と漏らしたら『どんまい。じゃあね』と、即座に通話を終わらせた。半年の情はないの!?と問い返したい気持ちは大いにあった。しかし、その気力も今はもう無い。
「ああ、言い過ぎたせいで天罰が下ったのかな……」
だとしたら、神様。今すぐにでも謝りますので、どうか私からお家を奪わないでください。