それでは恋をはじめましょう
「興味あるかなって、思って。この前も日本代表の試合見てたって言ってたから」
「きょ、興味はあるんですけど、知識はゼロというかマイナスというか……」

 私が申し訳なく思いながら答えると、涼風先輩は意外にも嬉しそうに笑った。
 
「それならサッカー好きになってもらえるように俺が隣で解説する」
「……いいんですか?」
「その代わり、その次は野球観戦にも行こう?……で、俺の隣で柊さんに解説して欲しい」
「え?」
「野球、詳しいでしょ?ときどき部長と楽しそうに野球の話してる柊さん、いいなと思って」

 私の野球馬鹿はダダ漏れのようだ。
 部長とは推している球団が同じで、よく会話が弾む。
 そんな私のことを涼風先輩はいい……いいな?……あれ?

『いいなと思って』

 何がどう?いいな?……と?思って?
 
「涼風先輩は部長と仲良くなりたい、みたいな?」
「え?いや、俺は柊さんと……」

 それだけ言って涼風先輩は照れくさそうに口元を手で覆った。
 それ以上言えないと言いたげに、手にした缶コーヒーも開けないまま、彼とともに自販機のそばで頬を赤らめる。
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