この恋、温め直しますか？ ～鉄仮面ドクターの愛は不器用で重い～

「それですよ。年配のドクターなんか『こっちも忙しいからねぇ、どうせ飲みにも連れていってもらえないし』と嫌みっぽくて。過剰接待が禁止されてずいぶん経つのに、いまだ未練があるんでしょうか」

　かつては医師へ誕生日プレゼントを贈ったり、夜の店で接待したりという行為はこの業界では当たり前だった。

　だが病院と製薬会社の癒着や賄賂がたびたび問題になったこともあり、業界団体は過剰接待を禁じる厳しいルールを設定した。

　さらにインターネットの発達により、医師はもはやＭＲを介さなくても薬の最新情報を手に入れることができる。医師からすればＭＲと親しくするメリットは薄れてきているのだろう。

「そうね。ネットで十分、ＭＲとの面会など不要と言う先生も多くなったわ」

　環はそこで言葉を止め、不敵な笑みを浮かべてみせた。

「でも、今の状況は他社のライバルたちより一歩先を行くチャンスだと私は考えてる。ネットでは得られない、ドクターたちが欲しがっている情報を的確に提供できれば信頼を得られる。優秀なブレーンとして認めてもらいましょう」