この恋、温め直しますか? ~鉄仮面ドクターの愛は不器用で重い~
「患者に寄り添う……というのが苦手だ。たとえば難病の告知をした際に患者や家族に泣かれても適切な言葉が出てこない」

 高史郎は決して冷たい人間ではないと思う。

 ただ、心の奥底に抱えている優しさを上手に表現できないだけなのだ。

 彼自身も自分の不器用さに葛藤しているのだろう。悔しさと寂しさの入り交じる表情からそれが伝わる。

「大学に戻って研究に専念するほうが合っているとよく言われるし、真剣に考えてみるべきなのかもな」

 環はグッと両のこぶしを握り締める。

「そんなの……私は嫌です」

 幼い子供の駄々のように感情がそのままあふれてしまった。

「昔、言ったじゃないですか。『臨床医になった要くんを見てみたい』って」

 久しぶりに彼を『要くん』と呼んだら、懐かしさと苦さが胸に込みあげた。

「実際にこの目で見ることができて嬉しかったのに、やめちゃうなんて言わないでください。要先生は絶対にいい臨床医だと思うから」

 やけに強硬な環の主張に高史郎は困惑気味だ。

「君は患者ではないから医師としての俺の仕事ぶりは知らないだろう? なにを根拠に向いているなどと」
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