この恋、温め直しますか? ~鉄仮面ドクターの愛は不器用で重い~
「さっきの瀬田准教授の講演、原稿を考えたのは要先生だと聞きました」
高史郎はややバツが悪そうな顔で環の視線から逃れようとする。
「あれは患者さんの心を深く理解していないと書けない内容だと思います。要先生はきちんと患者さんに寄り添えているはずなので安心してください」
環と薬の話をするときだって、彼は一度たりとも病院の利益を優先した考えを述べたことはない。
主語はいつも『患者が』だった。
そういう自分の美点に彼がちっとも気がついていない様子なのが歯がゆくてたまらない。
環はまるで自分のことのように、必死になって言葉を重ねた。
「気にすべき点はそこじゃないです! もう少し表情を柔らかくして、あと自分の長所は遠慮せずアピールしてください。要先生、妙にかっこつけちゃって隠すから!」
「妙にかっこつけて……」
高史郎の声が沈む。環は慌てて「わ、悪口じゃないですよ」と弁解した。
「要先生のいいところ、患者さんにも知ってほしいなって。だから!」
環の熱弁に高史郎はふっと目を細める。
そして……めったに見られない極上の笑みをこちらに向けた。
「――ありがとう」
「それ! 今の笑顔」
高史郎はややバツが悪そうな顔で環の視線から逃れようとする。
「あれは患者さんの心を深く理解していないと書けない内容だと思います。要先生はきちんと患者さんに寄り添えているはずなので安心してください」
環と薬の話をするときだって、彼は一度たりとも病院の利益を優先した考えを述べたことはない。
主語はいつも『患者が』だった。
そういう自分の美点に彼がちっとも気がついていない様子なのが歯がゆくてたまらない。
環はまるで自分のことのように、必死になって言葉を重ねた。
「気にすべき点はそこじゃないです! もう少し表情を柔らかくして、あと自分の長所は遠慮せずアピールしてください。要先生、妙にかっこつけちゃって隠すから!」
「妙にかっこつけて……」
高史郎の声が沈む。環は慌てて「わ、悪口じゃないですよ」と弁解した。
「要先生のいいところ、患者さんにも知ってほしいなって。だから!」
環の熱弁に高史郎はふっと目を細める。
そして……めったに見られない極上の笑みをこちらに向けた。
「――ありがとう」
「それ! 今の笑顔」