この恋、温め直しますか? ~鉄仮面ドクターの愛は不器用で重い~
 環は思わず叫ぶ。

「その顔を、患者さんにも見せてあげてください」

 きっとみんなが高史郎のファンになる。そう断言できるほどに優しくて素敵な笑顔だった。

「俺は今、笑っていたか? 意識するとわからなくなるな」

 真面目に笑顔の再現をこころみている彼がおかしくて環の顔は自然とほころぶ。

 しばらく歩いてから、照れた表情の高史郎がためらいがちに口を開く。

「俺も……君がMRになっていたことがわりと嬉しかった」

「え?」

「あの映画に出てくるかっこいい女性、ちゃんと夢を叶えたんだな」

(それも覚えていてくれたんだ)

 彼が自分を〝かっこいい女性〟と認めてくれたこともすごく嬉しい。

 この胸の高鳴りとあふれる熱い思いには覚えがある。

 かつての記憶が蘇っているだけなのか、それとも今の環から生じているものなのか、いったいどちらだろう?

(今さらだからとずっと逃げてきた。でも〝今〟がそのときなのかもしれない)

 すれ違ってしまった過去、こじれてしまったそれをほどくことはできるだろうか?

(だってやっぱり要先生があんなことを言うなんて想像できない)
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