この恋、温め直しますか? ~鉄仮面ドクターの愛は不器用で重い~
コミュニケーションが苦手なくせに、いや、苦手だからこそなのだろうか。
彼の人との距離感は少し独特だ。
『環』とためらいもなく呼び捨てにしたときもそうだったし、今もそうだ。
遠いと思っていたら急に近くにいるし、揺さぶられて、気がついたときにはもう……堕ちている。
(今さらだってわかってる。でも、聞きたい)
環は意を決して顔をあげた。
「か、要先生!」
至近距離で視線がぶつかって絡み合う。
密度を増した空気がとろりと溶けて、ふたりを世界から遮断した。
「なに?」
静かな世界に背筋がぞくりと震えるほどの色香をのせた声が響く。
環が喋り出そうとしたその瞬間、流れ出した無機質な電子音がふたりの世界を壊して急に周囲の色々な音が聞こえはじめた。
少し先には人が歩いているし、近隣の店の客の気配もしっかり感じる。すぐ近くの国道を走る車の音だってここまで届いていた。
「あ……」
「すまない。電話が」
彼はスーツの胸ポケットからスマホを取り出して一瞥する。
困ったように眉をひそめて「病院だ」とつぶやいた。
「もちろん出てください。お気になさらず!」
彼の人との距離感は少し独特だ。
『環』とためらいもなく呼び捨てにしたときもそうだったし、今もそうだ。
遠いと思っていたら急に近くにいるし、揺さぶられて、気がついたときにはもう……堕ちている。
(今さらだってわかってる。でも、聞きたい)
環は意を決して顔をあげた。
「か、要先生!」
至近距離で視線がぶつかって絡み合う。
密度を増した空気がとろりと溶けて、ふたりを世界から遮断した。
「なに?」
静かな世界に背筋がぞくりと震えるほどの色香をのせた声が響く。
環が喋り出そうとしたその瞬間、流れ出した無機質な電子音がふたりの世界を壊して急に周囲の色々な音が聞こえはじめた。
少し先には人が歩いているし、近隣の店の客の気配もしっかり感じる。すぐ近くの国道を走る車の音だってここまで届いていた。
「あ……」
「すまない。電話が」
彼はスーツの胸ポケットからスマホを取り出して一瞥する。
困ったように眉をひそめて「病院だ」とつぶやいた。
「もちろん出てください。お気になさらず!」