この恋、温め直しますか? ~鉄仮面ドクターの愛は不器用で重い~
 またもや電話が邪魔をする。

 なんだか皮肉な暗示のようにも思えたが、ドクターが病院からの電話を無視するなどあってはならないこと。

 それは彼もわかっているのだろう。

 「悪い」と短く告げて、環に背を向けて話しはじめた。

「なるほど。いや、構わない。すぐに戻る」

 漏れ聞こえてくるその台詞で自分はまたチャンスを逃してしまったのだと環は悟る。

 高史郎には見つからないよう小さくため息を落とした。

(いや、でも要先生はドクターだもの。こればかりは仕方ない)

 すぐに気持ちを切り替えて、通話を終えてこちらを振り返った彼に声をかける。

「呼び出しですか? 国道に出ればすぐにタクシーがつかまると思いますよ」

 急を要すならきっと電車より早いはずだ。

「いや、指導を担当している研修医からだった。俺は彼に怖がられているから電話をかけてくるなんてよっぽどだと思う」

 高史郎も短い電話だけで詳しいことはまだ聞けていないようだったが、研修医の彼になにか大きく落ち込む事件がありヘルプを求められているらしい。

「直接会って話を聞いてみようと思う」
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