この恋、温め直しますか? ~鉄仮面ドクターの愛は不器用で重い~
 その言葉に環は無意識に口元を緩めた。

 彼はやっぱり臨床医に向いている、学生時代の自分の直感が大正解だったことが誇らしい。

「はい、いってらっしゃい」

 笑顔で彼に手を振る。すると高史郎がその手をガシッとつかんだ。

「大通りまでは一緒に行こう。君は意外と危なっかしいところがあるから」

「危なっかしいところなんてあります?」

 自分としては、小学生から現在に至るまでずっとしっかり者ポジションにいると認識していた。

「学生時代のあの見るからに軽薄そうな男とか、瀬田みたいなのに目をつけられやすいだろう?」

「それは私のせいではないかと!」

 彼に手を引かれて歩き出す。

 キュッと握られたその手から伝わる熱が、すっかり冷たくなっていた環の恋心を甘やかに溶かしていった。
< 115 / 222 >

この作品をシェア

pagetop