この恋、温め直しますか? ~鉄仮面ドクターの愛は不器用で重い~
「昔の恋人と元サヤになるなんてよくあることだと思うよ~。うちの兄夫妻もそのパターンで結婚までいったしね」

 厳密には昔の恋人ではない。でも環にとって高史郎は一番距離が近づいたことのある異性には違いなかった。

「がんばってみてもいいと思う?」

「うん、がんばってみなよ。この十年、誰にもときめかなかった環がときめいたんでしょう? それってすごいことだよ!」

 萌香の優しい笑顔が環の背中を押してくれる。

(たしかにそうだよね)

 恋愛下手そして処女を卒業したいと、これまで合コンやパーティーにはそれなりに顔を出してきた。

 出会いの数は決して少なくなかったはず。それでも十年間、誰にも心を揺さぶられることはなかった。

 そんな自分がやっと恋愛感情の片鱗を取り戻せたのだ。この再会はきっと大事にすべきだろう。

「けどさ……」

 言ったそばからまた臆病風に吹かれてしまう。

「いい感じかもって思っているのは私だけって可能性も! 彼がこの再会をどう思っているのかは全然わからないし」

 忘れてはいけない。

 自分は彼が発したらしい言葉にひどく傷ついたが、同じように彼にひどい言葉を投げつけてもいる。
< 117 / 222 >

この作品をシェア

pagetop