この恋、温め直しますか? ~鉄仮面ドクターの愛は不器用で重い~
「別に君の会社のためじゃない。あの薬は患者の助けになると考えているからだ。ついては――」

 正式導入に向けて必要な準備を高史郎が語り、環はうなずきながらメモを取った。

 必要な話を終えると、環は席を立ちぺこりと頭をさげた。

「新薬をご検討いただき本当にありがとうございます。導入のサポートはもちろん結果の検証まで責任を持ってしっかりと対応させていただきますので」

「あぁ、信頼しているからよろしく頼む」 

 信頼、ドクターからのその言葉はMRにとって一番の誉れだ。環は顔をほころばせる。

「任せてください。それじゃ、頼まれた資料をすぐに揃えてまたご連絡しますね」

「待って」

 踵を返そうとした環の腕を高史郎が引く。意図したわけではなくとっさにつかんでしまった、高史郎自身もそんな表情を浮かべている。

「なにか?」

「このあと……もう少し時間があるか?」

 その台詞はものすごく言いにくそうにボソボソと紡がれた。

 社に戻る環を見送りがてらということで、病院の中庭をゆっくりと歩きながら話をすることになった。

「この質問は医師として投げかけるわけではないから、嫌なら答える必要はない」
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