この恋、温め直しますか? ~鉄仮面ドクターの愛は不器用で重い~
「難しい問題だな。その彼女の言い分も理解はできる。仕事より結婚や家庭を大事にしたい、そう考えるのはなにもおかしいことじゃない」

 彩芽の、高史郎の言い分は正しい。

けれど環は彩芽に仕事も諦めないでほしいと考えていた。言葉にはしなかったけど、きっと彼女にも伝わったのだろう。

(でも私がその気持ちを押しつけるのは傲慢だった)

「私は自分の恵まれた環境をいつの間にか当たり前に思っていて、どこか上から目線で彼女の悩みをとらえていたんだと思います」

 努力は報われる、結果を出せば評価される。それは正社員という恵まれた地位を前提として成り立っていたことなのに。

 そういう自分の驕りが彩芽を深く傷つけたのかもしれない。

「チームマネジメントに悩むのはいいことだと思う。きっと君を成長させる」

 そこまで言ってから彼はじっと環を見つめた。真剣な瞳に射貫かれる。

「だけど、自分の環境に引け目を感じる必要はない。環の恵まれた環境は君自身の努力で得たものも多いはずだ」

 高史郎がかけてくれる毛布のなかで、環の冷え切っていた心はじんわりと温かさを取り戻していく。
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