この恋、温め直しますか? ~鉄仮面ドクターの愛は不器用で重い~
 ほかにどんな言葉をかけていいのかわからず、環は黙りこくってしまう。

すると高史郎は優しい笑みを浮かべて「そんな顔をする必要はない」と言ってくれた。

 彼がポツポツと自分の生い立ちについて語る。

実家のある鎌倉の地で要家は代々不動産業を営んできた。祖父が会長で父が社長。九歳のときに両親が亡くなり、高史郎は両親と住んでいたマンションから祖父の家に移りそこから高校卒業まで祖父とふたり暮らしだったそうだ。

「両親が健在だった頃は会社の会長である祖父しか知らなかったから、とにかく怖い人だと思っていて一緒に暮らすのは恐怖でしかなかった。でも――」

 高史郎は懐かしむように目を細める。

「仕事を離れた彼はすごくユニークな人間でね、いつも思いつきの趣味に俺を巻き込むんだ。そば打ち、油絵、ギター。急にこの漫画を読めと全巻与えられたこともあったな」

 高史郎という人間がどうやって形作られたのか、少しずつ紐解かれていくようで彼の過去を知るのは楽しい。

「あれ? でも今の話だと要先生は大事な跡取りなんじゃないですか?」

 兄弟もいないようだし、実家の会社はどうなっているのだろう。
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