この恋、温め直しますか? ~鉄仮面ドクターの愛は不器用で重い~
「いや、それは気にしないで。むしろ相談してもらえてよかった。なにかあってからじゃ遅いもの」

 彩芽はMRではないけれど自分のチームの一員だ。その言葉に彩芽はホッとした顔を見せる。

「私、たいして美人でもないから最初は自意識過剰かな?って思っていたんです。でも最近の彼は少し怖くて……」

「そうなのね。すぐに先方に連絡を入れて担当者変更を申し入れてみるわ」

 ところがその提案は彩芽に待ったをかけられた。彼女は必死な様子で首を横に振る。

「そ、そこまではしなくていいです。(おお)(ごと)にしたいわけではないので。彼との接点を減らしてくれれば十分ですから」

 彼女の主張も理解はできる。こういうトラブルは被害者側も好奇の目にさらされやすいし、騒ぎになるのが嫌なのだろう。

「正式に結婚が決まったら私は仕事をやめるつもりなので、それまで穏便に過ごしたいんです」

 環はうなずいた。

「わかった。なら、彼が来たときの対応は別の人にお願いするね」

「はい、ありがとうございます」

 彼女は重ねた両手を自分の胸に当て、ふぅと細い息を漏らした。
< 167 / 222 >

この作品をシェア

pagetop