この恋、温め直しますか? ~鉄仮面ドクターの愛は不器用で重い~
 高級でも安っぽくもない、ごく普通のシティホテルだ。

 ビジネスマンが多く泊まっているし宴会利用なども多いから安心だろう。

「そのままそこにいて。私もすぐに行くから」

 ずっとホテルのロビーにいるわけにはいかないだろうし、ひとりにするのは心配だ。

 とりあえず自分が付き添って警察に行くべきか相談しよう。

 環は通話を切るとすぐに駆け出した。

◇ ◇ ◇

 その日はいつにも増して多忙で、高史郎はずいぶんと遅いランチを病院内にあるスタッフ用の休憩ルームで済ませていた。

 病院の向かいにあるパン屋のカレーパンと紙パックの牛乳。

 高校時代を思い出すようなメニューだが、ちゃんとしたパン屋のそれは高校の購買で買うものよりずっとおいしい。

(今度、環にもすすめてみよう)

 どうでもいいような日常の出来事も彼女には話したくなる。

 雑談も他愛ないメッセージのやり取りも案外楽しいかもしれない、そんなふうに思いはじめている自身の変化に自分が一番驚いていた。

「いくら准教授だからって今の時代にありえないでしょ! いつか訴えられるんじゃない?」

「瀬田先生だと冗談にならないよ~」
< 171 / 222 >

この作品をシェア

pagetop