この恋、温め直しますか? ~鉄仮面ドクターの愛は不器用で重い~
「顔も天才級ですよね~」
「まぁね、問題はあの癖の強~い性格だけ」
「ほんと、それですよ!」

 楽しそうなふたりの笑い声が遠ざかっていく。大学病院のナースは多忙なのだろう。他愛ない雑談をしつつも、動作はキビキビと素早い。

 彼女たちとは対照的に環の歩みはどこか緩慢になった。

(要……いや、ものすごく珍しいってわけでは……けど癖の強い性格……)

 環の脳裏にとある人物の顔が描き出される。

 さらりと涼しげで端整な顔立ち。にこやかに笑っていれば、きっとテレビのなかのアイドルにも見劣りしない。でも、彼はいつも気難しそうに口を引き結んで背中から「話しかけるな」とでも言いたげなオーラを発していた。

 要高史郎。環にとって忘れたくても忘れられなかった人。

(いや、違うよね。ただ名字が同じ……ううん、要が下の名前の可能性もあるし)

 癖の強いドクターをナースたちが下の名前で呼ぶだろうか? ふと湧いたその疑問を強引に頭から追い払う。

(そもそも、ドクターって人種は癖が強いものよ)
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