この恋、温め直しますか? ~鉄仮面ドクターの愛は不器用で重い~
 こっちはそう強引でもない、実体験に基づいたまぁまぁ正確な分析だ。難関の医学部受験から始まり六年間の学生生活に医師国家試験。晴れて医師となっても勉強、勉強の日々。

 それを平然とこなせる人間はその時点で普通とは形容しがたい。よい意味でも悪い意味でも、医師は個性的な人が多いと思う。

(だから、あの要くんとは無関係よ)

 自分にそう言い聞かせて環はひとりうなずいた。

 ちょうど、少し先に目的地である脳神経外科の医局が見えてくる。

 環はそこで、自分がアスティー製薬の新しいMRで担当医にあいさつに来た旨を告げる。

「別人、別人……」

 待たされている短い時間、魔除けの呪文とばかりにそうつぶやき続けたが残念ながら効力は発揮されなかった。

 環の前に姿を見せた新しいドクターは因縁の相手である要高史郎、その人だった。

 高史郎が新薬の話ならばじっくり聞きたいと言ってくれたので、院内にある人の少ない休憩スペースで彼と向き合う。

「アスティー製薬の速水と申します」

 環が差し出した名刺を受け取ると、彼はあいさつもそこそこにすぐに本題に入った。

 高史郎とふたりきり、この状況は嫌でも苦い記憶を呼び起こす。
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