この恋、温め直しますか? ~鉄仮面ドクターの愛は不器用で重い~
 その日の夜。

 高史郎から着信があったけれど環は罪悪感を振り切って指先を【拒否】のほうにスライドした。

 昼間の部長の言葉が頭をよぎったからだ。

『瀬田准教授以外にもこういう営業をかけたドクターがいるのなら白状しなさい。対応を考えなくてはならないから』

 今の環には枕営業の疑惑がかけられている。枕営業にはもちろん相手が必要だ。

(つまり、私が担当していた男性ドクターはみんな疑われている状況なのよね。新薬の件で接点の多かった要先生にはきっと真っ先に嫌疑がかかる)

 瀬田は緑邦大病院には黙っておくつもりのようだが彼の思いどおりになるとはかぎらない。

 どこかから話が回って、やはりきちんと調査を……となる可能性だってある。

 今このタイミングで自分と連絡を取っていたと知られれば高史郎は確実にクロと判定されてしまう思われてしまう。

 そんな迷惑はかけられない。

 アスティー製薬と緑邦大病院が事態を完全に収束させるまでは、うかつな行動はできない。

 今は彼と電話もメールもすべきではない、環はそう結論づけた。

(ごめんなさい、要先生)
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