この恋、温め直しますか? ~鉄仮面ドクターの愛は不器用で重い~
 そう言いながら武人が応接室の扉を開けると、そこに彩芽が立っていた。

 彼女は小刻みに肩を震わせ、なにかを覚悟した表情でじっと武人を見つめている。

「お前……なんで……」

「証拠は彼女が持っています」 

 高史郎のその言葉に武人はぴたりと動きを止めて固まった。

 みんなが息を詰めて、テーブルの上に置かれた彩芽のスマホを凝視する。

 彩芽の指先が画面をタップすると音声が流れはじめた。

 彩芽と武人の声だ。

 環と瀬田が偶然ホテルで会ったあの夜の裏側があきらかになる。

『速水さんと男性の写真は撮れました。武人さんが見せてくれた瀬田准教授の写真と同じ顔……間違いないと思います』

『そうか』

『でも、見知らぬ男性が助けに入って……准教授は帰ってしまいました』

『実際にあの二人がヤッたかどうかなんてどうでもいい。写真さえおさえれば十分だ! 彩芽、よくやってくれた』

『これで……私たち結婚できるんですよね?』

『もちろん。彩芽の花嫁姿が楽しみだよ』

 音声が終わると、彩芽は部長に顔を向ける。

「今回の件を仕組んだのは菊池さんと私、この音声がその証拠です」

「彩芽……お前、なんで録音なんか……」
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