この恋、温め直しますか? ~鉄仮面ドクターの愛は不器用で重い~
 緑邦のブラックジャックと呼ばれる彼が臨床の現場から離れるなんてことになったら、医療界にとっても患者にとってもはかりしれない大きな損失だ。

 だから彼のキャリアを台無しにはできないという自分の判断自体は間違いじゃなかったと今でも思っている。

 けれど彼は「ほら、やっぱりくだらない」と笑う。

「あの『わかった』は、君が話してくれないのなら自分でどうにかしてやるという決意表明であって、別れを承諾したつもりはまったくなかったよ」

 環に別れを告げられた日の心境を高史郎はそんなふうに振り返る。

「それで、チームのみんなやほかの病院のドクターにも働きかけて無実を証明しようと動いてくれたんですか?」

「あぁ。君はよく理解していると思うが、よく知らない人間とコミュニケーションを取るのは俺の一番の苦手分野だ。なかなか骨が折れたよ」

 高史郎はややおおげさに肩をすくめてみせた。

「そうですよね。……そんなことするの全然要先生らしくないのに」

 高史郎の瞳が優しい弧を描き、頭に置かれていた手がそっと環の髪をすべり落ちていく。
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