この恋、温め直しますか? ~鉄仮面ドクターの愛は不器用で重い~
「まったくだ。他愛ないメッセージのやり取りも今回のような行動も、君といると自分が自分でなくなっていく。でも、なぜだろうな? それが意外と心地いいんだ」

――恋をするのも悪くない。

 耳元でささやかれた、彼らしからぬ台詞が環の胸を甘くくすぐり熱っぽい眼差しがまっすぐに注がれる。

「これは真面目な話だからちゃんと聞いてくれるか?」

 真剣な表情で彼はそんなふうに前置きした。

「医師という仕事は自分にとって天職だと思ってる。けどな……環とどちらかしか選べないのなら、俺は迷わず君を選ぶ」

「え……えぇ?」

 目を瞬く環を説得するように彼は丁寧に言葉を尽くす。

「天職はもうひとつくらいは見つかるかもしれないが、こんな俺が恋をできる相手は間違いなく君しかいない。環でないとダメだから」

 弱ったように眉尻をさげる彼が愛おしくてたまらない。

 思わず両手で彼の頬を包み込むと、高史郎の大きな手が環のそれに重なる。

「今度同じような状況になったときは必ず相談してくれ。今さらこの手を失うのは……耐えられない」

 ギュッと強く握られた手から彼の思いが伝わってきて胸がじんわりと温かくなる。 
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