この恋、温め直しますか? ~鉄仮面ドクターの愛は不器用で重い~
 その夜。

 日本酒の品揃えが抜群の渋い居酒屋で、環は麻美と萌香とお喋りに花を咲かせていた。

「お人好しすぎる。私なら名誉棄損で慰謝料をふんだくるってやるかな!」

「でも弁護士に頼んで訴え起こすのって大変だよ~。時間と労力を考えたら割りに合わないもん」

 勇ましい麻美と現実主義の萌香、ふたりらしい見解だ。

「まぁもういいの。なんていうか幸せで満ち足りていると心に余裕があるっていうか~」

 ヘラヘラと頬を緩ませる環にふたりは祝福と呆れの入り交じる複雑な顔をしてみせる。

「おめでとう!を言ってあげたいところだけど、浮かれすぎててウザいわね」

「環が幸せなのは祝福するけど、私に三次元の男の素晴らしさを布教したりはしてこないでよね。彼氏ができた途端にそのムーブをかましてくるオタク仲間ってわりと多くて、うんざりしてるから」

 麻美はともかく萌香までもが意外と冷たい。

「え~、もっと盛大にお祝いしてくれると思ってたのに!」

「女子高生じゃないんだから男ができたできない程度の話で、そんな無邪気にはしゃげないわよ」

 憎まれ口を叩きながらも、ふたりの目が優しいことに環はちゃんと気がついている。
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