この恋、温め直しますか? ~鉄仮面ドクターの愛は不器用で重い~
 新薬で成果をあげるために、最優先で攻略しなくてはならない緑邦大病院の脳神経外科医。その彼とのファーストコンタクトはなんとも言えない気まずいムードのまま終了した。

 白状すれば、彼と過ごす時間は自分にとって苦痛でしかない。それが仕事になるなんて最低最悪の状況だ。

(まずいな。MRになって七年、今回が最大のピンチかもしれない)

 新薬を普及させること、自身に課せられたそのミッション……現時点では達成できる未来がまるで見えなかった。

 ◇ ◇ ◇

 長丁場となったオペを終えた高史郎は手術着を脱ぎ、自身の肺に新鮮な空気を取り込んだ。

 医師としてはまだ新米に毛が生えた程度だが、脳神経外科医なのでオペの数はそれなりにこなしている。

 それでも慣れるという感覚はまったくない。どんなオペでも気力と体力を激しく消耗する。

 もっとも自分の姿勢は医師として正しいという自負もある。

 たとえ簡単と言われる部類のオペでも患者は命を懸けて臨んでいるのだ。

 その命を預かる者として、油断など許されるものではない。
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