この恋、温め直しますか？ ～鉄仮面ドクターの愛は不器用で重い～

　季節は三月中旬。

　アウトドアにはまだ少し肌寒いという欠点もカフェが暖炉風のヒーターを用意することで解消してくれている。

　食べやすい大きさに野菜を切り終えた環は包丁を置き、ふぅと小さくため息を吐く。

　いつもはダウンスタイルにしていることの多い黒髪ロングを今日は低めの位置でお団子にしていた。

　洋服はくすみブルーのざっくりしたニットにデニムという大人カジュアルなスタイル。店員さんに見立ててもらったので変ではないと思うけれど、着慣れないのでどうにも落ち着かない。

（そもそも綺麗めカジュアルって難しすぎない？　私にとって綺麗とカジュアルは相反するものなんだけど?）

　環のワードローブは仕事用の服と全開カジュアルな部屋着のみ。オシャレなバーべーキューに対応できる洋服は持っていなかったので、ニットもデニムも今日のために慌てて調達した新品だ。

「野菜の下ごしらえ、ありがとうございます。助かりました」

　男性のひとりが丁寧にお礼を言って、環の切った野菜を受け取る。

「いえ、ちょっと小さくしただけですから」