この恋、温め直しますか? ~鉄仮面ドクターの愛は不器用で重い~
 根が深すぎるコンプレックスを打ち明けているのは親友のふたりだけだ。

 いつものごとく、お酒が進むにつれて環の愚痴も止まらなくなる。当然、話題は再会したばかりの彼に向かう。

 ちなみにふたりは高史郎のことを直接は知らない。同じ大学ではあるけれど、映画サークルに所属していたのは彼と環だけだったから。

「どう考えても、あの男が諸悪の根源なのよ。なのに再会、それも担当ドクターになるなんて不運にもほどがあるわ」

 環はわりと本気で思っているのだけれど、ふたりからのツッコミは冷たい。

「十年も前の出来事に原因を求めるのは、いいかげんやめなさいよ」
「というか、その最初の彼にかぎらず環はまぁ男運ないよね~」

 的確すぎるふたりのコメントにうまい反論は思いつかない。たしかに麻美の言うとおり高史郎との因縁は十年も前のこと。

(でも、あの一件がなければ……もっと男の子と上手に接することができていたように思うんだよね)

 自分が処女であることの遠因は高史郎にある。

 これは正当な原因と結果の分析。いや、やはりただの責任転嫁だろうか?

「でもさ、十年ぶりの再会って響きはちょっとロマンティックじゃない?」
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