この恋、温め直しますか? ~鉄仮面ドクターの愛は不器用で重い~
 高史郎も環とまったく同じ理屈でキャンセルを決めたようだ。

「でも、女の子たちに誘われたんじゃない?」

「あぁ。彼女たちは医学部の男に興味があるだけのようだから別に俺である必要はない。学内だけでも数百人は存在するんだし」

 なんとも彼らしい回答にホッとすると同時に、恋人でもないのに探りを入れるようなマネをしてしまった自分を環は少し恥じた。

 誰かの特別になりたいという感情は想像よりずっと厄介なものなのだと思い知る。

「だけど……」

 高史郎が心地よさそうに夜空を見あげた。

「いい夜だから、まっすぐ帰るのももったいない気がするな」
「ほんとだね」

 通りの両脇の街路樹は青くライトアップされていて幻想的だ。

 環はクリスマス当日よりも、近づくお祭りにみんながワクワクしている今の時期のほうが好きだった。

「映画でも観ないか?」
「よかったら、映画館に――」

 同時に同じ提案をした自分たちに、ふたり揃ってクスリと笑う。

 ふらりと訪れた映画館でちょうどいい時間のレイトショーに入る。

 ありがちなアクションコメディで自分の好みからは外れていると思ったのに……やけに楽しくてずっと笑っていた。
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