この恋、温め直しますか? ~鉄仮面ドクターの愛は不器用で重い~
「私は……臨床医になった要くんを見てみたいな」

 意外な言葉を聞いたという顔で彼は幾度か目を瞬いた。

「なぜ?」

「要くん、一見冷たそうに見えるけど本当はちゃんと優しいから。逆の人より、ずっと臨床医に向いてると思う」

 バチッと目が合うと彼は慌てたように視線をそらした。

 動揺したときに手で口元を隠すのは彼の癖なのかもしれない。あさっての方向を見つめたまま、ぽつりとこぼす。

「……参考にさせてもらう」

 照れた様子が新鮮で、なんだかかわいい。

「うん!」

 駅に行くためには大きな歩道橋をひとつ渡る必要がある。

 長い橋の真ん中に差しかかったところで高史郎がふと足を止めた。

「どうしたの?」

「いや、月が綺麗だなと思って」

 彼は手すりに両肘を置いて顔を上に向ける。環もそっと隣に寄り添う。

 高史郎の見つめる先には白銀に輝く満月があった。背筋がぞくりとするような妖しげな美しさだ。

「月ってどうして妖艶なイメージがあるんだろうね? 同じように夜空に輝くものでも星はすごく健全な感じがするのに」

 たとえば流れ星。綺麗だなとは思うけれど月を見あげたときのような感傷は湧いてこない気がする。
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