この恋、温め直しますか? ~鉄仮面ドクターの愛は不器用で重い~
 高史郎は興味深そうにうなずいた。

「言われてみればそうだな。フィクションの世界でも人を惑わせるのはいつも月だ」

 彼の顔がゆっくりとこちらに向けられ、互いの自然がぶつかる。

 もしかしたら自分たちも月に魔法をかけられたのかもしれない。

「帰りたくないな。この夜が終わってしまうのが惜しい」

 いつもの環なら絶対に口に出せない台詞。

 返ってきた彼の答えもちっとも?らしくない〟もので……。

「なら、帰らなくてもいいんじゃないか?」

 伸びてきた彼の手が環の輪郭をなぞって顎にかかる。

 気がつけば美しい顔面がすぐそこまで迫ってきていた。

 いつも低温度な瞳が今はやけに熱っぽくて、「環」と自分を呼ぶその声は切なく色っぽい。

(どうしよう。これ以上ドキドキしたら心臓がもたない)

 だけど思ってしまった。今夜、心臓が壊れてもいいから……彼と一緒にいたいと。

「要くん。あの、私ね……」

 続く言葉を彼のキスが塞ぐ。

 きっと冷たいと思っていたのに、高史郎の唇は環のそれよりはるかに温かい。

 初めてのキスは想像していたよりずっと雄弁だ。言葉より多くのものが伝わってくる。

「――はぁ」
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