この恋、温め直しますか? ~鉄仮面ドクターの愛は不器用で重い~
 彼が好き、離れたくない。そう強く思ったからここに来た。

 それは嘘じゃないけれど恋愛経験のない環はキスの先はおぼろげにしか想像できていなくて……それが今、急にリアルになった。

 自分に触れる高史郎の手はとても優しく乱暴なところなどみじんもない。

 それでも、彼は環が思うよりずっとずっと……男だった。

 生身の男性の欲望、未知の領域への恐れが環の全身を硬くこわばらせる。

「あ、待っ……て」

 消え入りそうな声で訴えるけれど、高史郎の耳には届かない。

 環の首筋から鎖骨へと唇を這わせていく彼はまるで熱に浮かされたみたいに夢中になっている。

 彼のその変化は嬉しいことのはずなのに、怖いという感情が先に出てくる。

 高史郎の大きな手が環のウエストのくびれをなぞった。

「……ひっ」

(どうしよう。今の声、全然かわいくなかったかもしれない)

 彼の愛撫にどんな反応を返せばいいのか、自身の身体におかしなところがあったりはしないか、もし痛かったら「やめて」と言っても許されるのだろうか?

 失敗するシーンばかりが脳裏をよぎり、心も身体もガチガチに固まり冷たくなっていく。
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